大岩山日石寺は、立山連峰の裾野にあり、「大岩のお不動さん」と呼び親しまれています。不動明王を本尊とし、その境内には、国指定史跡大岩日石寺石仏、重用文化財大岩日石寺磨崖仏をはじめ、三重の塔、山門、六本滝など数々の寺院や名所があります。



◆不動明王像(本堂)
この石仏は、真言密宗の総本山日石寺の本尊として全国の信者の帰依を集めています。中央に不動明王座像、左右に制咤迦(せいたか)童子立像、矜羯羅(こんがら)童子立像、阿弥陀如来座像、行基菩薩座像が凝灰岩の巨岩に半肉彫りで彫り出されており、中部地方における最高傑作として高い評価を得ています。作は藤原時代(平安時代中頃)と考えられますが、行基菩薩座像はややおくれて彫りだされたものと思われます。不動明王座像は右手に力を現わす剣、左手に智を現わす羂索(けんさく)を持つ迫力ある芸術です。室町時代、上杉勢の兵火に、昭和42年に火事にあいましたが、ほとんど損傷をうけることなく今日まで残っています。
◆三重の塔

県で最も歴史ある唯一の木造三重の塔です。柱は丸柱で、初重に四天柱と呼ばれる柱、中央に心柱があります。江戸時代後半の作ですが、工作技法に古い点が見られます。
特色としては、まわりに壁がなく中が丸見えです。これは、建造時に財政難に陥り壁を省略したもののようです。
現在は、近世の社寺建築の工法を知る上で貴重な資料となっています。
◆藤水

不動明王の厳石を廻り出る御霊水は、眼病平癒に霊験あり、諸人の願いに御利益があるとされています。また、富山の名水にも選ばれている「大岩山日石寺の藤水」として知られ、人気を集めています。科学的にも硼酸分が含まれていることが証明されています。
昔から、大岩の不動さんは目の病気に効くといわれ、眼病が治った話は数多く伝えられています。加賀藩には名医が多いが眼科医がいないと言われるのは、大岩の不動さんが目を治してくださるので目のお医者さんがいらないということを言い表しているように思われます。
この御霊水をくみ取る時には不動尊の御進言、
なうまくさんまんだ、ばざらだん。
せんだまかろしゃだ。そはたや。
うんたらた。かんまん。
を唱え、大聖不動明王の大慈悲を蒙りましょう。
◆夫婦岩(めおといわ)

上層部が二つに分かれている大岩を仲むつまじく夫婦が寄り添うように見えることから「夫婦岩(めおといわ)」と呼ばれ、「夫婦円満、家内安全、縁結び」の象徴、神が宿る場所として祭られています。
他には「妹背岩」「点空石」「炉壇石」など、数多くの岩石が自然に配置されております。
◆金比羅

文政5年(江戸中期)大岩山全国信徒の家運繁栄と寺門興隆の為、遠く讃岐金比羅宮より当山第11世如龍和正(文化7年〜天保3年)が御神体礼をお受けになられたのが草創です。
金比羅様は薬師12神將の一つとして人生の航海の安全、財宝商売繁昌、海の安全の神として尊崇されています。


千巖渓(せんがんけい)
六本滝を横に130メートル下ると千巖渓(百滝渓)と呼ばれる渓谷があります。そこには双岩抱き合う妹背岩、外に点空石、炉壇石、鯉梯石、蝦口石等風味溢れる数多くの岩石が自然に配置され、それを縫って清水が流れています。そして至る所に瀧を作り、白雲の崩れる如く、白竜の躍る如く飛沫を上げています。
秋は紅葉の名勝に、春は新緑萌えいづる渓谷の美をほしいままにし、梵鐘の音色と和して、六根清浄の和讃にとけ込んでいます。
千巖渓は全山不動信仰、仏緑の聖地となっています。